工場さんと

名古屋の工場さんがご来社された。

昨年からお仕事を始めた工場さんで、管理がしっかりしているので、少しずつ仕事が増えてきた。

良い工場と組めるかどうかがこの仕事においての肝である。

去年は春先に製品不良が多発し、お客様との取引停止寸前まで追い込まれた。

依頼していた工場さんの外注先で、研修生の入れ替わりや減少が起きていて、品質、管理のレベルがかなり落ちていた。

納期やコストを追い求めた結果、お客様にご迷惑をかけてしまった。

自分自身も忙しさにかまけて、現場から遠ざかっていたことで気づけなかった。

そして気づいた後の対応も、工場さん任せにしてしまったため、傷口を広げてしまった。

 

独立する前からではあるが、仕入先さんとの付き合い方を大事にしてきた。

スポットの仕事で終わるのではなく、継続的にある程度まとまった仕事を出していくことで、お互いにメリットを出していけるし、お客様にも安定して商品を供給できる。

ただ長い間うまく回っていると、そこから変わりにくくなるし、変化に気づきにくくなる。

他社と比べてどういうレベルなのかも把握できていなかった。

全ては自分の油断が招いた結果。

一度つくり場を全て見直し、お客様とも一緒に工場に行き、環境を整えた。

新規の工場さんを増やし、どういうものづくりをしているか、管理の方法、コスト感など、比較する中で新しく見えてきたこともあった。

工場さんから教えられ、鍛えられる日々である。

 

あれからもう1年が経つ。

いま去年と比べて、生産は安定してきている。

良い商品を作れているという実感がある。

やってきたことは間違いではなかった。

それでも常に危機感を持って。

現場にもっと近づいていく。

もっとレベルアップするために。

 

生地をつくる

カットソー製品の生産がメインのため、生地屋さんには週に何回も行く。

生地屋さんが在庫している生地を使うだけなら大して難しいことはないのだが、オリジナルで生地を作ることが多いので、細かい打ち合わせ等も必要になってくる。

生地屋さんが在庫をたくさん持たなくなったことや、お客様のオリジナル志向のため、全体の半数くらいはオリジナルで生地を作っている。

 

独立する前はニットの生産がメインだったので、カットソーの生地を作るということには疎かったのだが、仕事を通してたくさんの経験をさせてもらったため、ある程度の生地に対しては対応できるようになった。

お客様から製品のサンプルや写真をいただき、「こんなものを作りたい」というケースが多い。

使っている糸や、生地の厚み、風合いなどからどのようなセッティングにするかを考える。

なんでもオリジナルで作れば良いというわけでもない。

同じ雰囲気のものが在庫生地の中にあって、それを使う方がメリットがある場合はそちらを勧めることもある。

だから常に在庫生地がどんな展開をしているかもチェックしておかなければいけない。

 

だいたいお客様からくるのは無理難題が多い。

ないものを作るわけだから当たり前なのだが、そこに面白さがある。

同じ糸を使っても、どの機械でどういう設定で編むかによって、全く別物になる。

そして仕上げ方法によっても生地の顔が変わってくるのである。

限られた時間の中で、何がベストなのかを選択し、判断する。

 

昨日も試編み生地が3種類上がってきた。

次の春に向けて、今一番面白いことをしている。

旧友

後輩が家族の事情で急遽帰ることになり、福岡出張2日目は博多に住む大学時代の仲間と飲むことに。

2年半ぶり。

前回会ったのがそもそも10年ぶりくらいで、それまで消息不明になっていた。

旅行で九州に行くと決まった後にFacebookで友達申請があり、急遽会うことになったのだ。

今回も急な展開だったが、昼から飛行機の時間までしっかりと飲んだ。

 

大学時代、一番最初に仲良くなり、一番飲みに行った相手。

前回会ったのが久しぶりだったのに、それを感じさせない距離感。

仲が悪いわけではないが、普段は連絡を取り合うようなことはしない。

住んでる場所も、やってる仕事も全く違うのに、こいつとは話していてしっくりくる。

このやりとりが心地良い。

嬉しいことも辛いこともお互い曝け出して、サシで飲める関係。

唯一無二なんだなと思った。

 

今度はこいつに会いに来ようと思う。

そのために福岡に出てくる価値はある。

 

予定外のことだったが、めちゃくちゃ楽しかった。

実り多い福岡出張となった。

 

1杯のコーヒーから

出張で福岡へ。

会社員時代の後輩と、同じく会社員時代の先輩に会いに。

久しぶりの飛行機で午前中には現地入りし、天神周辺をリサーチ。

たくさんのお店を回る中で、何か新しいチャレンジのヒントを見つけられたらという思いがあった。

福岡に来たのは3度目だが、街をこれだけ時間かけて歩いたのは初めて。

洋服屋を中心に回ったのだが、一番刺激を受けたのは護国神社近くの珈琲屋さん。

茶店というよりは珈琲屋なのだ。

古民家を改装して作られたこじんまりとしたお店だが、入った瞬間の良い香りと落ち着いた雰囲気。

何よりもコーヒーを淹れるおばちゃんの所作の一つ一つが見応えがあって美しい。

ドリップしたコーヒーをシェイカーに入れ、製氷につけて回転させながら冷やしていく。

決して急いでいるわけでもなく、かと言って無駄もなく。

その時点で心打たれてしまっているのだ。

提供されたアイスコーヒーは、濃厚さと程よい酸味がとても美味い。

ここに来れただけで今日福岡に来た甲斐があったなと思えた。

たかがコーヒー1杯。

されどそのコーヒー1杯に学びが詰まっている。

進化する仕事

来春の商品に向けたサンプル作成を始めている。

品番に20とつくようになって、2020年がもうすぐなのだということを実感する。

春夏に向けてはプリントTシャツなどを毎年つくることが多く、そのロゴや図案のグラフィックをつくるため、一日PCと向き合っている。

 

イラストレーターを仕事で使うようになったのは、法人化する少し前だった。

もともと大学時代に少しだけ使ったことはあったが、仕事で使えるレベルではなく、グラフィックは工場さんや外部の人に依頼していた。

ところが、お客様から絵型をデータで欲しいと言われたことがきっかけで、自分でやらざるを得ない状況になり、意を決して使い始めた。

絵がもともと苦手で、絵型などは縮尺定規を使って描いていたのだが、イラストレーターで描こうとすると倍以上時間がかかる。

わからないことはネットで調べたり、人に聞いたりしながら、それでも続けた。

年間に150型近く仕様書を作成する。

その度に絵型を作成するのだが、悪戦苦闘しながら続けていくと、手で描いていた時よりも早くなっていた。

しかも、似たような形、デザインを描くときは、それまでつくってきたデータを再利用でき、飛躍的に早くなった。

絵型をイラストレーターで作成できるようになったおかげで、紙やペンが必要なくなった。

場所を選ばず、パソコンがあれば仕様書を作成できるようになった。

出先のカフェや出張先でも仕様書作成、修正依頼をできるようになった。

データをクラウドフォルダに入れて、お客様の事務所で商談中でも過去の仕様書を取り出しができるようになった。

 

そして調子に乗ってTシャツのグラフィックに手を出す。

最初の頃は「なんかいつもと雰囲気違う」と訝しがられ、ドキッとしたが、今ではその場でサイズを直したり、色を変えたりできるなどメリットを感じてもらえている。

苦手意識を持っていたフォトショップにも手を染め始めた。

 

実力的には素人に毛が生えたレベルではあるが、続けてやってきたことで少しずつ成長し、成果に結びつけられていると実感できる。

今年も自分がデータ作成したTシャツが店に並んでいる。

それが嬉しく、誇らしくもあり、もっと頑張ろうと思える。

地道に続けること。

それが一番自分を支えてくれている。

洋服屋難民

工場さんの展示会が原宿であったので、立ち寄った帰りに原宿リサーチ。

最初に入った会社が原宿だったので、この辺りは歩き慣れた場所である。

が10数年前と比べて、明らかに海外の人の割合が増えたし、街並みも様変わりしている。

そう言えば昔好きだったブランドのお店もなくなっている。

お店はたくさんあるけれど、入りたいと思うお店はない。

いつからだろう、洋服屋難民になったのは。

ファッションが好きだったころは行きつけのお店があって、そこに行くのが楽しみで、仲の良い店員さんがいて、買わなくても洋服の話で盛り上がって。

「趣味は買い物」なんて履歴書にも書いてたくらいだから、その時間が好きだったのだと思う。

大人になったからなのか、自分の趣味が変わったのか、つくる側になってしまったからなのか。

ワンクリックでどこでもモノが手に入る時代に、手に入れる場所を探しているのはどういうことなんだろう。

 

きっと求めているのは、ドキドキするような刺激と、人とのつながりなんだと思う。

いまそれを作り出す側にいるはずなのに、自分が満たされていない、面白くない状態だから、それをつくることができていない。

面白いこと、楽しいことにも鈍感になってしまっている。

子供のように、素直にものごとを受け止められる大人でありたいと思う。

 

力を発揮できる場所

スタイリストさんが始めたブランドの製品を生産している。

先日テレビにも出てたくらいなので、業界では名の通った人らしいが、新たに始めた自分のブランドで、服作り以外の部分で苦労をされている。

もちろん、洋服づくりにおいても、生地選び、仕様、縫製など、同じ洋服でも買う側から見る視点と、つくる側からの視点は全く違う。

それに戸惑いながらも、なんとかサンプルを作成し、展示会までこぎ着けた。

ここまででもかなりエネルギーを要するのに、発注段階になると、さらに面倒が増えてくる。

品番や色番号をどうするかということから、ブランドネーム、品質ネーム、下げ札など。

一つ一つを決めていかなければいけない。

品番や色番ってどういう風うに決めるのか、洗濯絵表示はどうやって指示するのか。

慣れないことばかりで、思ったように進まず、苦労しているのがわかる。

普段からパソコンを使っていないので、発注書をつくるのにも四苦八苦している。

本当はそういうことが得意な人に依頼できると良いのだが、まだブランドを始めたばかりで、人に頼む余裕もない。

大手企業が始めるブランドと違い、個人で始めるブランドはこういう部分で苦労している人は多いように思う。

様々なフォーマットからつくらなければいけない。

 

本来もっとクリエイティブなことに時間を使いたいだろうに、もったいないと思う。

少しでも力になれたらと思い、発注書や洗濯ネーム指示のフォーマットつくりはお手伝いしようということになった。

もともとそういう仕事は嫌いではないし、自分も独立するにあたって、新しいフォーマット作りをしてきた経験もある。

少しでも負担を減らせたらと思う。

一緒になってモノを作るのが好きなのだから、それに時間を使えるよう力を尽くしたいと思う。