心に響くサービス
出かける前、財布を見たら何かおかしい。
カードを入れる場所にあるべきカードがない。
キャッシュカードと保険証はあるのに、免許証やETCカードなど4枚ほどのカードがない。
慌ててカバンの中や家の中を捜索するが見つからない。
落としたか…
現金がなくなっていたわけではなく、カードも全て抜かれていたわけではないので、盗難というのはないのかなと思う。
取り急ぎETCカードを止めてもらおうと朝一でカード会社に連絡。
得てしてこういう場合の電話の対応にイライラしてしまうことが多いのだが、今日は違った。
言葉使い、受け応えがとても丁寧で心地よく、素晴らしかった。
もちろんマニュアルみたいなものがあって、それに沿って対応しているのだとは思うが、それでも良いと思えること。
これは簡単そうで難しいのではと思う。
特別変わったサービスではないのだけれど、こういう日常の小さな差が、業績にも大きな差を生み出すのではないかと思う。
たかが電話一つと侮ってはいけない。
たかが電話一つでも心に響くサービスはできるのだから。
転身
週末町歩きで豪徳寺へ。
とある情報誌で特集されていて、そこに会社員時代の先輩のお店も載っていたから。
先輩といっても直接同じ時期に働いたわけではない。
ただ、その会社での目立った業績をあげていたこと、その後、大手アパレルブランドにデザイナーとして引き抜かれ、チーフデザイナーとして活躍されたことから、有名な人ではある。
自分としては同僚というよりも、取引先として仕事をしたことが少しある程度で、むしろ元OBたちが集まる飲み会などで何度かご一緒させていただいたぐらいだ。
そんな先輩が2年ほど前にその大手アパレルブランドを退社された。
そして1年ほど前、豪徳寺にうつわのお店を始められたという話を聞いていた。
いつか行ってみようと思ってなかなかいけていなかったのだが、情報誌に掲載されていたことがきっかけでやっと行けた。
妻も私も初めて降り立つ豪徳寺。
住宅街で小さな商店街があるという雰囲気。
駅から数分のところに先輩のお店はあった。
突然の来訪に先輩は驚いていたが、ちょうど先客がいらして、常連さんなのか楽しそうにうつわの話で盛り上がっていた。
小さいけれどスタイリッシュで、うつわがきれいに並べられている。
レジには旦那さん、接客を先輩がしている。
言葉の節々から、選んできたうつわに対する思い入れと、窯元さんに対する敬意が伝わってくる。
生き生きとしている。
正直、アパレルの中でも成功者として功績をあげ、その地位を捨てて全く別の業種でしかもお店までというのが驚きであり、大丈夫なのかなと心配でもあった。
簡単にできる選択ではない。
「好きなことを仕事に」の「好き」の部分が中途半端では人を惹きつけられないし、必ず訪れる「壁」を超えていけないだろう。
ただ、「好き」が半端ないものだから、前向きになれる、感謝できるのかもしれない。
生きているということを実感しているのかもしれない。
妻が選んだお皿を3点購入しお店を後にした。
きっと会社員時代に業績をあげたエネルギーで、新しい場所でも成功するんだろうと感じた。
会社員時代の成功とは違う形なのかもしれないが、きっとそれは先輩がより望んだものになるのだと思う。
支払う
月末の最終営業日を弊社の支払日にしている。
毎度のことだが、月末が近くなると伝票や請求書の処理などで慌ただしくなる。
約束した日に必ず支払うというのは当たり前のことだが、その当たり前のことさえできない、あるいはしない会社があるので、弊社ではその当たり前に支払うということを大切にしている。
おかげさまでたくさんの仕入先さん、外注先さんと取引をさせていただいている。
その人たちからしてみれば、全く信用のない、資金力もない小さな会社に担保もなく商品を納めているわけである。
どれだけ口で良いことを言ったとしても、約束通り支払いをしてもらえなければ、信用を失ってしまう。
逆に、約束通り支払うということを毎月積み重ねてきたことで、少しずつ取引先さんからも信頼されるようになってきたのだと思う。
年々取引額も増え、1日のATMでの振込限度額を超えてしまうことも。
個人では扱ったことがないほどの大きな額の出し入れにびびったりもする。
それでも毎月丁寧に積み重ねていくこと。
大切な仕事であると思っている。
ランチミーティング
以前からお付き合いのある元デザイナーの方とランチ。
短い時間の中で、いろんな話を聞いていただき、アドバイスしてもらった。
よく言われることだけど、経営者は孤独だ。
社員がいようがいまいが孤独なのだと思う。
そんな中で話を聞いてもらえたり、相談に乗ってもらえる人がいるのはありがたい。
経営コンサルや、コーチングの人たちは、こういう役割を担っているのだなと思う。
その方の知り合いが経営しているアパレル会社が前日民事再生になった。
ネットのニュースでも出てるくらいだから、それなりに名の通った会社でもある。
こういうニュースは他人事ではない。
リスクと隣り合わせの日々を過ごしているのだと実感する。
真摯に仕事に向き合っていきたい。
居酒屋会議
会社員時代の後輩と飲みに。
子育てに悪戦苦闘している嫁さんに気を遣いながらなので、以前と比べると飲みに行く回数は明らかに減った。
ただ、人と話すことで自分の考えがまとまることもあるので、こういう時間は貴重だ。
彼ももともとファッションの専門学校を出ているため、つくり手側の人間であるし、もっとつくりたい人間だ。
今でも自社でデザインワークを中心にやっているが、やりたいことと、生活のためにやらなければいけないことを天秤にかけながらもがいているように見える。
新しいことにトライしていかなければいけないという危機感を持ちながらも、既存ができているゆえに新しいことに踏み出せない。
扱っている商品、規模、ターゲット層は違えど、自分の会社も同じようなことに悩んでいる。
やりたいという気持ちはあるのにできていない。
やりきっているという実感がない。
SNSの普及とともに、自分のやりたいを実現する方法は以前より増えただろうし、そういうケースをよく見かけるようになった。
それに刺激されたり、焦りを感じたり。
モヤモヤとしたものを抱えながら、心の中ではふつふつとやってやろうという気持ちは高まっている。
頭で考えるだけなく行動を。
何かが始まる気がする。
いや始める。
オリジナルTシャツ②
オリジナルTシャツの素材は綿-100%と最初から決めていた。
もともと天然素材が好きだし、仕事でも綿素材を中心に扱うことが多く、綿素材にはうるさい。
合繊系や、エアリズム、ヒートテックなどの機能素材は、肌の弱い私には合わない。
ひとえに綿-100%と言っても、素材によってはカジュアルにもフォーマルにもなりうる。
今回のTシャツはスーツのインで着ることを目的としている。
カジュアルになり過ぎず、上質感を素材選びのポイントにした。
あらかじめいくつか候補を絞っていたものの中で、最後はスビン綿とスーピマ綿で迷う。
どちらも世界を代表する超長綿で、希少なものだ。
原料の良し悪しは甲乙を付けがたいものがあったが、生地の厚み、詰まり具合、キックバックの良さからスーピマを選択した。
80/3 スーピマ天竺。
80番手の比較的細い糸を3本撚りしたもの。
1本撚り(単糸)や2本撚り(双糸)より、表面が均一になり光沢が出る。
その糸を通常の設定よりも細かい目で詰めて編んでいる。
度目を詰めて編むと、しっかりとした生地になる反面、キックバックが悪くなるという欠点があるが、この生地の場合しっかりとテンションを保っている。
厚みは厚過ぎず、度目が詰まっている分、透ける心配もない。
綿本来の光沢もあり、肌触りも滑らか。
決して安い素材ではないが、考えられうるベストの素材を選択できた。
そして、いよいよ形を決めていく。
<つづく>
お金と売上
気がつけばお金のことばかり考えている。
そんなにお金に執着がある方ではないと思っていたのに。
資金が潤沢な状態で始めたわけでもなく、ましてや先に仕掛りが発生するような業態なので、創業当初から資金繰りは常に頭を悩ます課題だ。
去年から従業員が増え、さらに考えることが増えた。
会社員時代、売上やお金のことを上から言われるのが嫌だったのに、会社員時代以上にお金のことを考えて、それを従業員に言う側になっている。
独立したばかりのころ、何もすることがなくて途方に暮れていた時、お客様から声をかけていただいた。
「手伝って欲しい」と。
同じころ、仕事が薄くなってきた工場さんから電話をいただいた。
「なんとかして欲しい」と。
人に求められて、それに応えることに喜びを感じ、自分が動くことで、周りの助けになっていることがとても嬉しかった。
その繰り返しが今なのだ。
変に経営者気取りをする必要はない。
もう一度あの時の自分に立ち返り、一つ一つの仕事を大事にしていきたい。
ベテランスタイリストさんが新たに始めたブランドの打ち合わせ。
エクセルが苦手らしく、製品発注書を作るのに困っていたので、お帰りになられた後、フォーマットを作成し、メールで送った。
すぐに返事が来て「涙が出るほど嬉しいです」と喜んでいただけた。
この労働に対して、対価をいただくわけではないが、自分にとっても嬉しかった。
朝からお金のことばかり考えて、頭が重たくなっていたのがスッキリした。