転身
週末町歩きで豪徳寺へ。
とある情報誌で特集されていて、そこに会社員時代の先輩のお店も載っていたから。
先輩といっても直接同じ時期に働いたわけではない。
ただ、その会社での目立った業績をあげていたこと、その後、大手アパレルブランドにデザイナーとして引き抜かれ、チーフデザイナーとして活躍されたことから、有名な人ではある。
自分としては同僚というよりも、取引先として仕事をしたことが少しある程度で、むしろ元OBたちが集まる飲み会などで何度かご一緒させていただいたぐらいだ。
そんな先輩が2年ほど前にその大手アパレルブランドを退社された。
そして1年ほど前、豪徳寺にうつわのお店を始められたという話を聞いていた。
いつか行ってみようと思ってなかなかいけていなかったのだが、情報誌に掲載されていたことがきっかけでやっと行けた。
妻も私も初めて降り立つ豪徳寺。
住宅街で小さな商店街があるという雰囲気。
駅から数分のところに先輩のお店はあった。
突然の来訪に先輩は驚いていたが、ちょうど先客がいらして、常連さんなのか楽しそうにうつわの話で盛り上がっていた。
小さいけれどスタイリッシュで、うつわがきれいに並べられている。
レジには旦那さん、接客を先輩がしている。
言葉の節々から、選んできたうつわに対する思い入れと、窯元さんに対する敬意が伝わってくる。
生き生きとしている。
正直、アパレルの中でも成功者として功績をあげ、その地位を捨てて全く別の業種でしかもお店までというのが驚きであり、大丈夫なのかなと心配でもあった。
簡単にできる選択ではない。
「好きなことを仕事に」の「好き」の部分が中途半端では人を惹きつけられないし、必ず訪れる「壁」を超えていけないだろう。
ただ、「好き」が半端ないものだから、前向きになれる、感謝できるのかもしれない。
生きているということを実感しているのかもしれない。
妻が選んだお皿を3点購入しお店を後にした。
きっと会社員時代に業績をあげたエネルギーで、新しい場所でも成功するんだろうと感じた。
会社員時代の成功とは違う形なのかもしれないが、きっとそれは先輩がより望んだものになるのだと思う。