黒船来襲
OEMという仕事をしているので、生産枚数は自社では決められない。
お客様から発注いただいた枚数を生産することになる。
1型(デザイン)100枚に満たない時もあれば、500枚を超える時もある。
発注枚数が多かろうが少なかろうが、やるべき仕事はさほど変わらないため、当然1型あたりの枚数が多い方が、会社としてはありがたいわけだ。
ただ、私がこの仕事を始めてからずっと業界的には良くない状況が続いているため、全体的な生産ロットは年々小さくなっているように思う。
そんな中、お付き合いのある古着のディーラーさんから面白い仕事の話が舞い込んだ。
人気のあるインスタグラマーのオリジナルTシャツ。
デザイナーは元々はアパレルの会社にいたらしいが、デザイナーをしていたわけではなく、いまは一般の主婦という。
言ってみればモノづくりについては素人みたいなものだ。
見本として渡されたTシャツはビッグサイズの無地T。
かなり厚手の生地を使用している。
「何枚ほど?」
「300枚ほど…」
「え!?」
そこそこ大きくやっているブランドでも最近は300枚という枚数を作れないでいる中で、ネットだけの販売で300枚とは強気だな、と思った。
「300枚をかける4色で」
「…?」
冗談なのかと。
が、それはリアルな話だった。
彼女のフォロワーはなんと16万人。
その人が自分のスタイリングなどをUPすると5000ほどの「いいね!」がつくという。
コメント欄も賑わい、「スタイリングがかわいい」だの「Tシャツ欲しい」など。
黒船来襲に近い衝撃なのかなと思う。
今までアパレル業界がやってきたことを一気にひっくり返そうとしている感覚。
何か時代の大きな変化を感じた。
自分たちが「何かおかしい」「変えていかなければ」ともがいているうちに、ヒョイっと軽くやってしまわれた感じ。
何か大きく心を動かされるものがあり、この仕事、やってみようと思ったのです。